夫と暮らしていた頃、遠出や旅行の計画はいつも夫まかせでした。
行く場所を選んだり、時間を決めたり、チケットを取ったり――
そういう段取りが、私にはどうしても苦手でした。
離れて暮らすようになってからは、
遠くへひとりで出かけることに少し戸惑いがあって、
しばらく足が向かなかった時期があります。
そんな中で、ある日ふと
「行ってみよう」と思えた日のことです。
夫と暮らしていた頃、
遠出や旅行のことはすべて夫が段取りしてくれていました。
私はただついて行くだけでよくて、
それが当たり前のようになっていました。
ひとりで動けないわけではないけれど、
知らない土地へ出かけるとなると、
急にハードルが高く感じてしまう。
そういう“苦手意識”が自分の中にずっとあったのだと思います。
離れて暮らすようになってから、
しばらくは遠くへ行く気持ちになれず、
家の周りだけで過ごす日が続きました。
無理に出かけようとも思わず、
気づけば“そういう時期”として落ち着いていたように思います。
それがある日、なぜか急に
「行ってみようかな」と思えた瞬間がありました。
計画を立てたわけでもなく、
勢いに背中を押されたような、ほんの短い気持ちの動きでした。
その気持ちに従ってみた日、
私は“ひとりで電車を乗り継いで遠くへ行く”ということを、
初めて自分の力だけでやってみました。
不安もあったけれど、なんとか目的地に着けたことが、
思っていた以上に大きな自信になりました。
向かったのは、前から気になっていた「猿島」。
写真で見て、行ってみたいと思っていた場所です。
船に乗って島に着いた瞬間、
あぁ、ひとりでも来られるんだ——
そう思ったら、胸の中がすっと軽くなりました。
そこから少しずつ、ひとりで出かけるようになり、
気づけば7年がたっていました。
しばらくのあいだは、
“ひとりで世界を広げていく感じ”がただ楽しくて、
それだけで満たされていました。
でも最近になってようやく、
「ここは夫と来ても楽しいだろうな」と
自然に思える瞬間が増えてきました。
ひとりで動けるようになったことが、
“強さ”になったわけではありません。
ただ、自分のペースで行きたい場所へ行けるようになったことで、
夫との距離の取り方も、前より落ち着いて受け止められるようになった。
離れて暮らす今の生活の中で、
気づかないうちに育っていった変化のひとつです。
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