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夫のいない夕飯に、もう慣れていた話

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夫のいない夕飯が、特別なものではなくなってから、どれくらい経ったのだろう。
母と二人で食べる夜のごはんが、いつの間にか「いつもの形」になっていました。
その日の何気ない食卓で、私はひとつのことに気づきました。



夜、野菜と肉を蒸しただけの夕飯を、母と二人で食べていました。
調味料も特につけず、いつもの味のまま。
「今日もおいしいね」と言いながら、静かに箸を動かす時間が、
その日は不思議と、とても満ち足りたものに感じられました。


湯気の立つ皿を挟んで、母と向かい合っていると、
外はもうすっかり暗くなっていて、
時計の音だけが小さく響いていました。
特別な話をするわけでもなく、
その日あったことを少しだけ交わして、
また黙って食べる。
そんな夕飯が、今の私たちのいつもの形です。


そのとき、ふと夫のことを思い出しました。
以前は、食卓に並ぶものも、今とは少し違っていた気がします。
私の作るあっさりした食事を見て、
「精進料理みたいだね」と笑われたこともありました。
悪意のない冗談で、私は少しだけ言い返して、
それでその日の会話は終わっていました。


今では、それもひとつの思い出です。
誰かと一緒に食べる夕飯のかたちは変わったけれど、
その変化に、私はもうあまり戸惑わなくなりました。
母と食べるこの静かな食卓も、
いつの間にか、私の暮らしの真ん中になっています。

夫のいない夕飯が、特別でも、寂しさばかりでもなく、
ただの「今日の晩ごはん」になっていたことに、
そのとき少しだけ気づきました。

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